Serum ferritin concentration and iron suppbments in patients with chronic renal failure
1984
保存療法中および血液透析中の慢性腎不全患者の血清フェリチン, 血清鉄, TIBCを測定し, 鉄剤および輸血の影響についても検討した.血清フェリチンは保存療法中の患者では健常人に比して男女とも低く, とくに女性において有意に低かった. 鉄剤および輸血を受けていない血液透析中の患者では健常人男性と同一レベルであり, 女性が男性よりもやや高値を示した. 鉄剤投与により上昇し, 輸血によりさらに上昇がみられた. 血清フェリチンとTIBCの間に有意な負の相関関係をみたが, 血清鉄, Htとの間にはまったく相関性がなかった. 血液透析中の患者に鉄剤投与を行ったところ, 投与開始前, 有効群は無効群に比してTIBCは有意に高く, 血清フェリチンは有意に低かった. 血清鉄はやや低く, Htについてはほとんど差はなかった. 投与に伴って血清フェリチンは上昇しているが, 有効群は無効群に比して緩やかなカーブを描いた. 鉄剤投与後血清フェリチンと血清鉄は有意な正の相関関係をみた. 血清フェリチンとHtとの間には相関性がなかった. またTIBCの高値群ほど血清フェリチンは低値を示した. 鉄剤投与総量と血清フェリチンとの間には高い正の相関関係をみた. 同様にTIBC, 血清鉄との間にも有意な関係をみた. 血液透析中の患者における輸血総量と血清フェリチンとの間には高い正の相関関係を認めた. 血清鉄との間にも有意な正の相関関係を認めているが, TIBCとの間には有意な関係はなかった.以上の成績より血清フェリチンは慢性腎不全患者においても鉄欠乏, 鉄過剰を判断する上で有用な指標であり, TIBCもある程度判断の指標となることが考えられた. しかし血清鉄のみで判断することは慎重であるべきであると思えた. 鉄剤投与の適応として血清フェリチンが100ng/ml以下, TIBCでも280μg/dl以上の症例は有効率が高いと考えられた.
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