失書における文字書き下し過程 —角回性失読失書, 頭頂葉性純粋失書各1例の検討—

1993 
左角回を中心とする脳梗塞による失読失書1例と左上頭頂小葉に限局した脳梗塞による純粋失書1例を対象とし, 文字書き下し過程をVTRで記録し検討した。失読失書例は, 書取り不可能な漢字では主に無反応を示し, 一方, 写字では, 書取り不可能な漢字も, 書取り可能な漢字と同じ速度かつ正しい筆順で書くことができた。このことから, 本例では書くべき文字の想起困難あるいは選択障害があるが, 文字自体を正しく書き下す能力は保たれている可能性が示唆された。純粋失書例は, 書取りにおいて字画をいくつかに分解し, ところどころを書き加えながら正答に至る場合と同様にして部分的誤りや一部の不足を示す場合がしばしばみられた。手本が呈示され文字の想起を要さない写字においても, 同様の特異な運筆がみられ, 書字運動パターンの障害も本例の失書の一因である可能性が示唆された。書取りと写字における文字書き下し過程の分析は失書の機序を知る上で有用と考えられた。
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