イノシトールリン脂質のがん転移への関与―“invadopodia”の形成機構

2016 
◎イノシトールリン脂質は細胞形質膜の内層に存在し,親水基のイノシトール環にリン酸基が0~3 個結合した分子構造をもつ.リン酸基の数・位置は複数のキナーゼ,ホスファターゼにより相互に制御されている.これらイノシトールリン脂質のうち,P(I 3,4)P2およびP(I 4,5)P2はinvadopodia(浸潤突起)形成にかかわることが報告され,そのメカニズムが明らかにされつつある.invadopodia はがん細胞が転移する際に形成される突起であり,高悪性がんと関連のある形質変化である上皮間葉転換(EMT)にもかかわっているとされる.イノシトールリン脂質キナーゼ,ホスファターゼの機能解明が進み,脂肪酸鎖長や不飽和度の違いも含めると数百分子に及ぶイノシトールリン脂質の選択的な制御が可能になることで,invadopodia を特異的に制御できる薬剤の創出が期待されている.
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