高齢者動脈硬化症の退縮に関する研究 (4) 中心性陥凹を呈する動脈硬化性病変と peroxisome proliferator-activated receptors (PPARs) 発現についての検討

2004 
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体 (PPARs) は脂質代謝に重要な役割を担う核内転写因子で, 糖質代謝, 炎症や動脈硬化などにも関与している. とくにPPARαとPPARγ発現が動脈硬化巣・進展のみならず, 退縮現象にも関与するか否かについて, 動脈硬化退縮の一形態像である陥凹性動脈硬化巣におけるPPARs発現を検討した. 方法: 高齢者剖検例大動脈の陥凹性動脈硬化巣を採取し, この病変の中央にある陥凹部とその周囲提部に分けて各々検索した. 採取した大動脈病変部を2分割し, 一片をRT-PCR用試料とし他片をPPARγ免疫組織化学染色に供した. PPARsはPCR反応後に検出されたバンドをNIH Image で測定した. 結果: 陥凹性動脈硬化巣の中央にある陥凹部の泡沫細胞は周囲提よりも減少し, 周囲提の泡沫細胞は陥凹部よりも増生していた. これらはHAM56陽性単球由来であり, 陥凹性動脈硬化巣の泡沫細胞核内にPPARγ陽性像を認めた. 泡沫細胞は陥凹性動脈硬化巣の陥凹部と周囲提の両者に陽性であった. RT-PCR法により陥凹性動脈硬化巣にPPARαとPPARγmRNAの両者の発現を認め, かつ, この陥凹性動脈硬化巣の陥凹部と周囲堤部の両者にPPARαとPPARγ発現を認めた. PPARγmRNA発現は大動脈のびまん性内膜肥厚部 (DIT) よりも陥凹性動脈硬化巣に多く, 陥凹部と周囲提部の両者ともに粥状動脈硬化巣よりも低値であった. とくに, 陥凹性動脈硬化巣の陥凹部よりも周囲堤部にPPARγmRNA発現は強度であり, その発現量も増加傾向にあった. しかし, 両者間に有意差はなかった. 粥状動脈硬化巣におけるPPARγ発現はDITよりも有意に増加していた. 一方, PPARαmRNA発現についても同様に, 陥凹部と周囲堤部の間の発現量に有意な差異はなかった. このように陥凹性動脈硬化巣にPPARs発現が認められたことは, 動脈硬化発症・進展における役割だけでなく, 動脈硬化性病変の退縮現象にもPPARsが関与する可能性が示された.
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