造血器および固形悪性腫瘍を標的にしたWT1ペプチドワクチン療法—1種類のWT1ペプチドの投与が種々の悪性腫瘍でclinical responseを誘導し得る—

2009 
WT1遺伝子(Wilms' tumor gene)は癌遺伝子としての機能をもち,また多くの造血器ならびに固形悪性腫瘍で発現している。その遺伝子産物であるWT1蛋白は,抗原性が高いことを示す実験データが蓄積されている。これらの知見はWT1 蛋白が癌免疫療法の標的として優れていることを示しており,これらを基に,WT1 特異的CTL を誘導できるWT1 ペプチドを癌ワクチンとして投与する臨床試験がHLA-A 2402 あるいはHLA-A 0201 をもつ患者を対象に開始された。その結果,1種類のWT1ペプチドを投与することにより,投与されたWT1ペプチド特異的な細胞性免疫反応の誘導(WT1特異的CTL 頻度の増加,WT1 ペプチド特異的DTH 反応の陽性化など),およびそれに基づくと考えられる臨床的反応が認められた。臨床的反応には,白血病細胞の減少,多発性骨髄腫におけるM 蛋白の減少,固形腫瘍の縮小,長期にわたる病勢の安定化(stabilization)などが含まれる。今後,複数のWT1-CTLペプチドの同時投与により,またWT1ヘルパーペプチド,分子標的治療薬,化学療法薬などとの併用により,WT1 ペプチドワクチンのさらなる効果の増強が期待できる。さらには,小児の悪性腫瘍への適応拡大も有望である。今後,WT1 ペプチドワクチンを投与する時期を工夫することにより(minimal residual disease の時期にadjuvant setting で用いるなど),さらにその有用性が増すと考えられる。
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