心筋梗塞発症の risk factor について
1979
心筋梗塞発生の risk factor として従来から高血圧症, 高脂血症, 糖尿病, 肥満, 喫煙などが報告されている. 本論文では急性心筋梗塞660例と対照群18,117例の臨床データを retrospective に比較することにより, これら risk factor の意義およびその性差, 年齢差について検討を行った. 喫煙者, 高血圧, 高 cholesterol 血症は対照群に比べて梗塞群で有意に多くみられたことから, これらの risk factor は従来の報告どおり心筋梗塞発症の重要な risk factor であると考られた. ついで糖尿病も risk factor の一つと考えられた. 一方肥満の程度は梗塞群と対照群の間に有意差をみとめず, 肥満のみでは risk factor となりえないという結果をえた. 高 triglyceride 血症も独立した risk factor としての意義はうすく, 肥満とともに間接的な risk factorであると考えられた. Risk factor の性差に関して, 糖尿病や高 cholesterol 血症では梗塞群と対照群間の有意差の程度が女性よりも男性で大であった. このことは女性における閉経と関係があると考えられる. 女性における estrogen などの内分泌因子が本来の risk factor のもつ危険性を低下させることにより, 血管のアテローム硬化を抑制し, ひいては梗塞発症の risk を低下させるものと考えられる. 以上から糖尿病や高 cholesterol 血症などの risk factor の重要性は女性よりも男性で大きいと考えられた. Risk factor の年齢差に関して, 多くの risk factor は老年者よりも若年者の梗塞群で有意に高率にみられた. このことは多くの risk factor を持つ若年者では血管のアテローム硬化が早期に進展し, 梗塞発症に至るばかりでなく, 他の疾患 (脳血管障害, 心不全, 腎不全など) にも罹患しやすく比較的若年で淘汰されるものと考えられる. 一方 risk factor を有しない者は老年まで生きのびるが, やがては冠動脈硬化をきたし, 梗塞発症に至るためと考えられる.以上から risk factoor の重要性は老年者よりも若年者で大きいと考えられた.
Keywords:
- Correction
- Source
- Cite
- Save
- Machine Reading By IdeaReader
17
References
0
Citations
NaN
KQI