Special Issue, Problems and the prospect on the working sites of slope revegetation for restoration of natural plant community
2007
2005年6月1日に施行された通称「外来生物法」では,規制対象となる「特定外来生物」と同時に,法規制の対象とはならないが取り扱い方について早急に検討が必要な「要注意外来生物」が示された。この中にはこれまで法面緑化に多用されてきた外来植物が多数含まれており,緑化現場では対応(安全)策として外来植物の使用を手控え,代わりに在来植物を使うことも多くなってきている。しかし,現在流通している在来種と称する植物材料のほとんどは外国産であり,また国内産であっても施工地から離れた他地域産のものしか入手できないことも多いのが実態である。このような緑化植物の取り扱いが続けば,遺伝子レベルでの自然界の撹乱を招く危険性があり,生物多様性保全対策をより難しくする。すなわち,法面緑化の現場では,要注意外来生物のリスト公開以来,導入種の選定,植物材料の調達,検査などにおいて,発注者―設計者―施工者―植物材料生産・流通業者などの間で,またこの問題を理解している人間と理解が不十分な人間との間で温度差や軋轢が生まれ,大きな混乱が生じている。そこで,本学会では,外来生物法施行以前から緑化植物の取り扱い方に関して,提言や見解の発表・公開,学会誌への特集記事掲載,研究集会の開催など様々な形で学会内外に説明を行ってきた。また,行政も動き始め,2005年度から環境省を中心とした四省庁の担当者(連絡調整会議)に,学識経験者(専門委員),緑化植物を扱う生産・流通・施工業界代表者らが加わった研究会が開催され,「要注意外来生物」の中の“別途総合的な検討を進める緑化植物”と,それに準じる外来緑化植物や外国産在来緑化植物なども対象として,緑化植物の取り扱い方についての検討が続けられている。京都での研究集会は,緑化植物の取り扱い方について相変わらず混乱している現場の方々に新しい情報をわかりやすく提供することと同時に,生物多様性保全に配慮した新たな自然回復緑化技術の確立と普及のためにできるだけ現場からの声を反映させようとの目論見で,まずは斜面緑化研究部会からの提案,四省庁の緑化植物取り扱いに関する検討結果・経過などを簡単に整理し,現場において発生している諸問題や課題に重きを置いて話題提供していただき,さらに会場からのご意見も加えて今後の展望・方策についての議論を深めることを主目的に開催した。しかしながら,当日は集会前後の予定が詰まっていたことや話題数に限りがあって,議論の時間がほとんどとれなかったことは残念であった。なお,後掲の本特集記事本文のあちこちに述べられているように,本当の意味での生物多様性保全に配慮した法面緑化を実現させるためには,国内産や地域限定産の種苗採取・生産・供給体制の整備,問題となっている緑化植物の性質の解明とその有効利用方法や管理技術の確立,緑化目標とする群落形成を実現させるための施工後の評価(検査)手法およびモニタリングや誘導的管理手法の確立などが必要であり,まだまだ解決すべき問題や課題が山積しているのが実態である。また,現場での混乱を収拾するためには,何よりも緑化植物の取り扱いに関するルールやガイドラインづくりが必要であろう。そのためにも,現場における様々な情報を成功事例だけでなく失敗事例も含めて数多く収集し,分析することが重要と考える。京都での研究集会や本特集記事が契機となり,学会誌や研究部会活動での情報提供が増え,議論が進めば幸いである。
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