High-flow nasal cannula療法により陽圧換気を回避できた急性呼吸不全の一例

65歳,女性。150 cm,38 kg 。既往歴として甲状腺 機能低下症,特発性門脈圧亢進症,肝硬変(child-pugh 分類 B)があり,11年前に食道癌に対し下部食道・噴 門側胃切除・空腸再建術を受けた。利尿薬とレボチロ キシン75μgを常用していた。日常生活はほぼ自立で あった。 2ヵ月前に膵頭部癌,腹膜播種のため予後数ヵ月と 宣言された。1ヵ月前より閉塞性胆管炎を発症したた め入院し,胆管ステント挿入および抗菌薬投与で一旦 軽快した。しかし耐性菌による血流感染および胆管ス テントの閉塞が生じた。鎮静下で内視鏡下胆管ステン ト再挿入術を行ったが嘔吐・誤嚥し,2日後(第6病 日)に誤嚥性肺炎を発症,第10病日に相談を受けた。 往診時意識清明,血圧103/53 mmHg,脈拍 101 /min,体温37.8°C,呼吸数35 /min,SpO2 86%(酸 素マスク5 l/min)。著明な努力様呼吸を呈し,左肺優 位にfine crackleを聴取した。動脈血液ガス分析では 酸素マスク3 l/min投与下で,pH 7.482,PaCO2 44.2 mmHg,PaO2 67.1 mmHg,HCO332.3 mmol/lで あった。血液検査ではWBC 13.75×103 /μl,CRP 15.0 mg/dlと炎症反応は高値だったが,肝腎機能は正 常で,N-terminal prohormone of brain natriuretic peptide(NT-proBNP)は1,190 pg/mlと軽度上昇で あった。胸部X線では広範囲の両側肺浸潤影を認めた。