透析医療におけるC型肝炎ウイルス (HCV) 感染症の疫学

1993 
C100-3抗体を用いた血清疫学的検討から, 透析患者でHCV感染率の高いことが指摘された. 輸血の関与が主因といわれるが, 陽性率は輸血の有無で差がないとの報告もある.感染経路を明らかにし, 予防法を確立する目的で, 維持透析患者1,080名, CAPD患者85名を対象にC100-3抗体陽性率を求め, さらに, 抗体陽性透析患者ではベッドコンソール集積性を調べた.透析患者全体での抗体陽性率は13.6% (147/1,080) と高く, 透析年数に応じて陽性率は増加し, 輸血の関与が大きいと考えられた. しかし, 輸血の既往のない抗体陽性者が19.7% (29/147) にみられ, しかも, その出現率は透析期間に応じて増加した. このことは, 輸血以外の感染経路の存在を強く疑わせる.医療従事者で陽性率が低く (1.4%), 非輸血例を含む抗体陽性者のベッドコンソール集積性が認められ, 患者から患者への感染経路の存在が示唆された. また, CAPD症例の抗体陽性率 (2.4% (2/85)) は, 同様治療期間の血液透析症例の陽性率 (9.4% (68/720)) に比べて低く, 感染機会として輸血に加え, 観血操作が重要と考えられた.透析現場では, 汚染血液が医療機器や医療従事者の手を介して, 他の患者に触れる可能性が十分ある. 予防対策として, HCV陽性者の正確な把握, 保菌者に対する透析ベッドの特定化, 汚染医療機器の十分な消毒など, B型肝炎ウイルスに準じた厳密な対応が必要と考えられる.
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