Videofluorography (VF), 嚥下誘発テスト(SPT)にて嚥下障害を評価した Wallenberg 症候群の1例

1997 
症例は65歳男性. 突然の右後頭部痛とめまい, 右顔面のしびれ, 歩行障害, 嚥下障害, 嗄声を主な症状とし, MRIにて延髄右 (背) 外側部から下小脳脚にT2 high intensity area を認め, 神経学的所見により Wallenberg 症候群と診断された. 歩行障害は発症1カ月後には平行棒歩行も可能となり改善傾向を認めたが, 嚥下障害は重篤で発症7週後, 経口摂取不能であった. その時点での嚥下誘発テスト (Swallowing provocation test: SPT) で潜時 (latent time: LT) は4.0秒と延長していた. Videofluorography (VF) により造影剤の梨状陥凹, 下咽頭内での貯留を認め, それが気道内へ流入し誤嚥を生じていた. また食道入口部の低圧化が遅れており, 入口部の開大不全が示唆された. 以上より咽頭収縮および食道入口部開大の不良による咽頭期下降期型嚥下障害と診断された. しかし, 嚥下訓練施行2カ月後の再検査ではSPTによるLTは1.2秒と正常範囲に入り, VFでは造影剤の梨状陥凹への貯留は減少し気道への逆流も僅かであった. 食道入口部の圧波形は低圧化が改善し, 圧変化率が増大していた. 下咽頭圧も圧ピーク値が上昇し, 圧波形上の面積も増大していた. 以上より, 嚥下機能の著明な改善を確認できたことにより, 嚥下訓練を続行し, 再検査1週間後から経口摂取量を漸増し, 1カ月後点滴による補液を必要とせず経口のみの栄養摂取に移行可能となり退院となった. 本症例において, SPTおよびVFによる嚥下障害の機能判定がリハビリおよび経過の観察にきわめて有用であった.
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