Two Cases of Ileal Cancer Arising at the Ileostomy after Total Proctocolectomy for Familial Adenomatous Polyposis

今回，我々は家族性大腸腺腫症（familial adenomatous polyposis；以下，FAPと略記）術後に発生したストーマ部の回腸癌を2例経験した．1例目は58歳の男性で，FAPのため31歳時に大腸全摘術，永久回腸ストーマ造設術を施行した．50歳頃からのストーマ部のポリープが直径約5cm大にまで増大した．2例目は65歳の女性で，FAPのため41歳で大腸全摘術，永久回腸ストーマ造設術を施行した．63歳頃からのストーマ部のポリープが直径3～4cm大にまで増大した．いずれの症例に対しても，腫瘤を含む回腸部分切除，回腸ストーマ再造設を行った．病理組織学上はいずれも腺癌であった．癌発生の原因は不明であるが，FAPという遺伝要因に，ストーマ部における物理的・化学的刺激などの環境要因が加わって起こる可能性が推測され，ストーマ造設・ケアにおける注意と定期的なフォローが重要と考えられた．