在宅高齢者の保健行動, 日常生活活動, 交通環境に対する認識の性・年齢差

1998 
本研究は, 生活環境の変化にともない高齢者の保健行動がどのように変化するかという観点から, 保健行動の関連要因として新たに交通環境に対する認識に着目し, 在宅高齢者の保健行動および保健行動との関連が想定される健康状態・日常生活活動 (機能的日常生活水準・外出行動)・交通環境に対する認識の各項目について, 性, 年齢階層別に検討した. これらの調査項目に対し, 42項目の質問項目を設定した. 加えて保健行動および関連要因の背景を検討するために, 保健行動の動機づけを調査項目とした. 各質問項目の再現性の検討はκ係数および一致率を適用し, 内的整合性の検討はクロンバックのα係数を適用した. 性・年齢差の分析はχ2検定を適用し, 危険率は5%とした. 調査地域は公共交通が不便な地域として神奈川県A郡A町を選択し, 層別無作為抽出法によりH地区在住の60歳以上の男女567名を抽出した. 郵送留置調査法により397名から回答を得た (回収率74.2%; 死亡・転居等を除く).結果は, 保健行動では女性の方が健診受診頻度とかかりつけの医師がいる割合が高く, 健康状態では女性の方が男性より問題のある人が多く, 機能的日常生活水準では男性より社会への関心や社会・文化活動への参加が少なく, 年齢による低下も男性より低年齢で生じていた. 外出行動では1時間以上かかる所に行くことのおっくうさが男性よりも低年齢で生じていた. また, 交通環境に身体的なつらさや道路通行時の不安, 不便さ等の問題を感じている人も多かった. 前期高齢者における保健行動の動機づけは男性と異なり, 病気になって人に迷惑をかけたくないという理由が多く, 楽しみのために健康を保持したいという理由は少なかった. これらの結果から, 女性の方が生活に対する能動性が低く, 生活に対する能動性と関連した保健行動の動機づけも低いと考えられた.
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