130℃～+100℃におけるポリプロピレンの分子運動

130～+100℃ におけるポリプロピレンの分子運動性に及ぼす, 立体規則性度, 結晶状態の効果を明らかにすることを目的とした。このために, あらかじめ, できるだけ十分にキャラクタライズされた試料を調製した。比容の温度変化, 比熱の温度変化, 力学的性質の動的損失の温度分散, 核磁気共鳴吸収法を用い分子運動を考察し, 同時にX線回折, 赤外線吸収スペクトル法を併用して, 分子運動性と構造変化との対応を付けた。比容の温度変化より3種のガラス転移点, Tg1, Tg2, Tg3が見出された。このうち低温側のTg1, Tg2は, 比熱測定からも確かめられた。力学的性質の動的損失の温度分散 (主分散) はTg2に相当し, 立体規則性度, 結晶化度に密接に影響された。核磁気共鳴吸収法より, アタクチックポリマーには, -130℃以上, -100℃以下において運動狭化する成分が, 全体の相と独立に存在し, 全体的運動狭化は立体規則性度の良いほど, より高温で発生した。特にアイソタクチックポリマーでも, 凝集状態の違いによって運動狭化の特性は異なり, solution grown crystal (希薄溶液からの結晶) や, 低分子量沈殿物には85℃以上まで広幅成分が存在した。広幅成分と狭幅成分の比は必ずしも結晶化度とは一致しなかった。