無ヘパリン透析 (NHHD) でのメシル酸ナファモスタット (FUT) の局所抗凝固剤としての有用性

1990 
出血の危険を有する慢性腎不全血液透析患者9例 (男6女3, 平均年齢49.7±5.0歳) に, 抗凝固剤にメシル酸ナファモスタット (FUT) を使用したEVA膜dialyzerによる無ヘパリン透析 (NHHD) を計267回施行し, 凝固時間とFUT血中濃度を検討し以下の結果を得た. 1. 凝固時間の指標としたHemochron®によるactivated coagulation time (ACT) ではNHHD前値169.2±2.4秒と比し, 1時間値165.9±2.4, 2時間値164.8±3.0, 3時間値156.1±2.3, 4時間値143.9±4.2, 5時間値165.0±3.1と各々有意の延長を認めず, 5分値173.9±3.8, 10分値169.2±4.0, 20分値158.3±6.7, 30分値160.7±5.0においても有意の延長を認めなかった. 2. NHHD血液回路動脈側FUT血中濃度1時間値58.0±14.6ng/ml, 2時間値73.3±4.7, 3時間値70.41±3.9と有意の変動を示さず平均67.6±7.7ng/mlであった. 3. FUT注入直後のNHHD回路動脈側チャンバー内FUT濃度は2,067±224ng/mlと著明な高値を示し, EVA膜dialyzer通過後の静脈側チャンバーでは1,100±150と通過前の53.2%に低下していた. また体内を経た動脈側血液では上述したごとく67.6±7.7とさらにその92.5%が活性を消失していた. 4. NHHDのFUT使用量はEVA膜では10.7±0.3mg/hrと, PMMA膜17.6±1.6やcuprophane膜16.8±0.5と比較して有意 (p<0.001) に少なかった.以上よりFUTは体外循環時の局所抗凝固剤として理想的と考えられ, FUTによるEVA膜dialyzer使用無ヘパリン透析は出血の危険を有する血液透析患者に対して有用性が高いと考えられた.
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