輸血によりGVHD (移植片対宿主病) をきたした維持透析患者の1例

1992 
3年前に血液透析を導入して以来, 毎月2単位 (200ml由来1単位) 程度の輸血を受けていた男性に移植片対宿主病 (GVHD) が発症した. その臨床像は発熱, 下痢, 肝障害, 汎血球減少であり, 最終的には呼吸不全に至った. GVHDの診断は骨髄生検, 皮膚生検, HLAタイピングより行った. 骨髄生検では著しい低形成像があり, 皮膚生検では表皮基底細胞層の空胞状変性とCD 8陽性リンパ球の浸潤を認めた. 同胞のHLAタイピングより両親のHLAハプロタイプが推測されたが, 患者のHLAフェノタイプはそれに矛盾を示した. マウス抗ヒトT細胞モノクローナル抗体 (OKT 3), メチルプレドニゾロンのパルス療法, 顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) の併用療法を施行したところ, 治療開始直後から末梢血の白血球数および血小板数の著明な増加がみられたが, 2週間後に患者はサイトメガロ肺炎で死亡した.輸血後GVHDは骨髄移植後などの免疫不全状態で発症することが多いが, 胸部外科手術の際の大量輸血後にも起こりうる. 我々の知る限りでは維持透析療法中の輸血によってGVHDをきたした症例の報告はこれまでにないが, 今後透析患者の輸血に際しては本疾患を念頭におく必要があると考えられた.
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