クスノキ挿木苗の生理・形態特性:実生苗との比較
2011
クスノキは多くの社寺林に植栽されており,天然記念物指定を受けた巨樹や地理的に特異な樹林を構成する遺伝資源として貴重であるため,その保護が必要であると考えられる。そこで,本研究ではクスノキ老木の挿木による更新の可能性を検討するため,挿木苗の生理・形態特性を調査し,実生苗との比較を行った。推定樹齢100 年以上のクスノキの老木から採取した3 年生の挿木苗の生存率は10% 程度であった。挿木苗は親木由来の形態特性を保持していたものの,発根後は実生苗よりも旺盛な初期成長を示した。葉の光合成速度は挿木苗のほうが実生苗よりも早い時期に高い値を示し,葉の耐乾性は挿木苗のほうが実生苗よりも高かった。以上の結果から,必要な本数の挿木苗を確保することができれば,クスノキ老木の更新が可能であることが示唆された。
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