痴呆を伴うパーキンソン病,“汎発性 Lewy 小体病”及び Alzheimer 型老年痴呆における Nucleus basalis of Meynert の細胞脱落

1984 
痴呆を伴うパーキンソン病 (PD) における cholinergic neuron system の障害を検討する目的で, その Nucleus basalis of Meynert (NbM) の細胞脱落の程度をPD類似疾患と比較検討した. 症例は痴呆のないPD5例, 平均76.4歳, 痴呆を伴うPD5例, 平均78.4歳, 汎発性 Lewy 小体病5例, 平均84.2歳, SDAT5例, 平均76.4歳, 進行性核上麻痺3例, 平均75.0歳, 線条体黒質変性症2例, 平均63.5歳及び正常コントロール群5例, 平均80.3歳の計30症例. 検索方法: 前記症例について中枢神経系各部位の Lewy 小体 (LB), 老人斑 (SP) 及び Alzheimer 神経原線維変化 (ANC) の出現頻度を調べ, 次いで無名質中のNbMのニューロン数を調べた. ニューロン数算出は細胞密度 (CD) 及び総細胞数 (TCC) で示した. 結果: NbMの神経細胞脱落はSDAT, 汎発性 Lewy 小体病 (DLBD) 及び痴呆を伴うPDでコントロール群と比較し有意の差で認められた. 即ち, CDではコントロール群と比較してSDAT及びDLBDで約70%の減少が, 又痴呆を伴うPDで約35%の減少が認められた. 一方, TCCでもSDAT及びDLBDで70%, 痴呆を伴うPDで約40%の減少がみられた. 痴呆のないPD, 進行性核上麻痺, 線条体黒質変性症ではコントロール群と大差なかった. LB及び脳老人性変化の出現状態は, DLBDでは大脳皮質, 基底核, 間脳, 脳幹部で多数のLBが認められ, 同時に高度の脳老人性変化を伴っていた. 痴呆を伴うPDでは, LBは間脳, 脳幹部では多数認めたが, 大脳皮質では散在性であった. 脳老人性変化は中等度に認められた. 痴呆を伴わないPDではLBの分布は脳幹部に限局しており, 脳老人性変化も加齢相応であった. 以上の結果から, 痴呆を伴うPD及びDLBDでは dopamine 作動系及びcholine 作動系両者の system degeneration が想定された.“汎発性 Lewy 小体病”の病理学的位置付けについて考察した.
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