膜を用いた浄水処理には従来の処理と比較して様々な利点がある一方で,膜ファウリングが大きな問題となる.近年の研究においてバイオポリマーと総称される高分子量親水性有機物が膜ファウリングの発生に強く関与することが示唆されている.本研究では特徴の異なる複数の原水よりバイオポリマーを回収・精製し,これらが発生させる膜ファウリングの差異について検討した.バイオポリマー濃度を統一して実施した膜ろ過試験では原水毎に膜ファウリング発生速度が明らかに異なっており,原水が異なるとバイオポリマーの特性が変化することが示された.バイオポリマー特性の差異はLC-OCDを用いた分子量分布測定,赤外スペクトル分析においても明白であり,バイオポリマーの大半が多糖類より構成される場合には不可逆的ファウリングの発生をより深刻にする可能性が示された.消散監視機能付き水晶振動子マイクロバランス(QCM-D)による分析では興味深い結果が得られた.QCM-D分析において膜材質ポリマーであるPVDFとの高い親和性が示されたバイオポリマーが高い膜ファウリングポテンシャルを有していた.また,バイオポリマーの粘弾性がファウリングの可逆性を説明する可能性が示唆された.今後QCM-Dを用いた分析データを充実させていくことで,膜ファウリングが発生しにくい膜材質を適切に選定できる可能性がある.