要旨 【目的】 COVID–19流行下において救急搬送された自殺企図患者の特徴を調査し,パンデミックが自殺に与える影響を検討する。 【対象】 2020年1月から12月をCOVID–19流行期,2018年1月から2019年12月までの2年間をCOVID–19非流行期として,当院救命救急センターに搬送された自殺企図および自殺既遂患者の年齢,性別,精神科通院歴,自殺手段を調査した。2020年と2019年については自殺企図者の同居家族,経済問題,就労,精神科診断についても調査した。さらに流行期については,20歳ごとの年代別,月別患者数を調査して,COVID–19新規患者数と比較した。 【結果】 2020年の自殺企図患者数は20代以下が39%を占めており,COVID–19非流行期の27%と比較して若年者の割合が増加していた。2020年の月別患者数の変化では,年代に関係なく,COVID–19新規感染者数が増加している時期には自殺企図患者は少なく,新規感染者数が減少した時期に自殺企図患者数の増加がみられた。自殺既遂についても同様の傾向がみられた。 【結語】 COVID–19の流行期では,若年者の自殺企図が増加した。また,流行期における自殺企図者数はCOVID–19新規感染者数の増減と逆の変動を示した。今後,パンデミックが自殺企図に与える影響をさらに解析する必要がある。