放射線治療単独でcomplete response が得られた高齢者肛門管扁平上皮癌の1 例を報告する。症例は86 歳,男性。排便時出血と肛門痛を主訴に近医受診。大腸内視鏡検査で歯状線直上に約1/3 周性の1 型腫瘍を認めた。生検で高分化型扁平上皮癌と診断され,精査加療目的で紹介入院。治療前のSCC は8.4 ng/mL と高値を示していた。腹部骨盤MRI では所属リンパ節,側方リンパ節の腫大や遠隔転移は認めなかった。本人・家族が手術と化学療法を希望しなかったため,放射線療法単独治療を選択した。1 日1 回2 Gy の照射を週に5 回,総線量60 Gy の骨盤内照射を施行した。放射線照射後の大腸内視鏡検査では,発赤を認めるのみで明らかな腫瘍を認めず,生検で癌細胞は認められなかった。治療開始3 か月後の骨盤CT 検査でも腫瘍は描出されず,CR と判定した。その後約3 年経過した現在,SCC の若干の上昇を認めるが,画像上再発の所見は認められていない。