78 歳,女性。当科初診 21 年前に潰瘍性大腸炎を発症した。当科初診 13 年前より右足に潰瘍が出現し,プレドニゾロン 5~10 mg/day を処方されたが完治しなかった。今回,腹部症状,皮膚潰瘍ともに悪化したため当科を紹介され受診した。皮膚生検にて真皮全層の血管周囲に好中球とリンパ球を主体とした炎症細胞浸潤を認め,各種検査で感染症,血管炎,膠原病は否定的であったため壊疽性膿皮症と診断した。プレドニゾロン 30 mg/day の内服で腹部症状は軽快したが皮膚潰瘍は改善しなかった。糖尿病など複数の基礎疾患を有しており,抗 TNF-α 抗体製剤など免疫抑制に関連する薬剤の追加投与は感染症の危険性が懸念された。追加治療として,抗 α4β7 インテグリンモノクローナル抗体であるベドリズマブが投与されたが皮膚所見に効果を認めず,次に,顆粒球除去療法を計 9 回施行したところ潰瘍の著明な改善を認めた。壊疽性膿皮症は潰瘍性大腸炎など他疾患に併存することが多く,合併する疾患によって保険収載され使用できる治療薬が異なることもあり,皮膚所見以外の疾病治療も併せて他科専門医との緊密な連携が求められることも少なくない。また,近年壊疽性膿皮症に対してプレドニゾロンやシクロスポリンに加えて抗 TNF-α 抗体製剤,顆粒球除去療法,ミコフェノール酸モフェチルなど様々な治療薬が提示されているが,免疫抑制作用を有する薬剤を複数使用することで感染症の危険性が増大することも念頭に診療に臨む必要がある。顆粒球除去療法は潰瘍性大腸炎を含めた特定の疾患を併存した症例のみ保険適用が認められているが,感染症の増悪の危険性がないため,患者背景によっては特に有効な治療として期待される。