ホタテガイの主要呈味構成成分であるGly, Glu, Ala, Arg, AMP, Na+, K+, Cl-の8成分からなる単純合成エキスを用いてオミッションテストを行い,各成分の呈味上の役割を調べた.また, 33成分からなる全合成エキスにグリコーゲンを添加し,その呈味効果を検討した.得られた結果を要約すると次のとおりである. (1) Glyは,ホタテガイの味の一つの特徴である強い甘味に大きく寄与するとともに,総合的おいしさの向上にも役立っている. AlaはGlyよりはるかに弱いが甘味に寄与している. Argは,苦味を呈するアミノ酸であるが,ホタテガイに苦味を与えず,むしろ嗜好性を強める役割を担っていると考えられる. GluとAMPの両成分は,うま味を与えると同時に,他の食品で認められているのと同様に味の持続性,複雑さ,こくなどを強め,嗜好性を増させる役割を果たしている, Na+,K+,Cl-も味の持続性,複雑さ,こく,まろやかさなどを強める効果を持つが,なかでもCl-の効果がもっとも顕著である. (2) 評価項目相互間の相関関係からも,うま味成分には味の持続性,複雑さ,こく,まろやかさなどを向上させ,嗜好性を増大させる働きがあることが示された,また,主成分分析でもホタテガイのおいしさに,うま味,味の持続性,複雑さ,こく,まろやかさなどが密接に関係していることが示された. (3) ホタテガイに多量に含まれるグリコーゲンは,味の持続性,複雑さ,こく,まろやかさなどを強め,とろりとした濃厚感を出させ天然感を増大させるのに役立っていると判断された.