Melatoninの臨床的意義は未だ不明である.著者らは肝硬変症22例,慢性肝炎11例,急性肝炎4例,慢性腎不全9例,各種内分泌疾患52例および健常者41例を対象とし,血清melatonin濃度をRIAにて測定し臨床的検討を加えた.その結果,肝硬変症および急性肝炎患者における血清melatoninの昼間基礎値は全例高値を示した.また,肝硬変症患者においても健常者と同様の夜間に増加する血清melatoninの日内リズムを認めた.血清melatoninの昼間基礎値はICG15分停滞率および血清総ビリルビン濃度と有意の正相関を示した.血中からのmelatoninクリアランスは2相性を示し,肝硬変症患者における血中半減期は健常者に比較して有意の遅延を示した.以上の成績より,肝機能障害時における血清melatoninの昼間基礎値の上昇機序は,肝でのmelatonin代謝クリアランス速度の遅延によると考えられ,肝機能障害の程度の判定の臨床的指標として有用であると考えられる.