成長に伴うラット顎下腺の交感神経性β-受容体機能の完成過程をIsoproterenol刺激 (IPR;30mg/kg体重, i.p.) による唾液分泌応答の特性, 唾液蛋白質構成アミノ酸比率の変動, 及び顎下腺ホモジネートから調製した粗膜標品に対する [3H] Dihydroalprenolol ([3H] DHA) の結合特性から観察した.IPRによる刺激応答は2週齢で明確に認められ, 3週以後, 分泌量, 分泌速度は4~6週の間で特有の変動を示した後, 7週以後, 成熟齢の状態となり, 唾液蛋白質量の変動も同様の傾向が認められた. 唾液蛋白質を構成する全アミノ酸比率の変動では2週齢で最高の出現を示した後, 次第に成熟齢の組成に至るアミノ酸 (Lys, NH3, Pro, Met, Pheなど), これと全く逆の経過をとるもの (Thr, Glu, Gly, Aleなど), 著明な変化を示さないもの (Tyr) 4~6週で出現の状態が変化するもの (Arg, Asp, Ser, Val, Metなど) を認め, 増齢による唾液蛋白質ディスク電気泳動像変化解析の資料が得られた. 交感神経性β-受容体機能の特異的な遮断薬である [3H] DHAの膜標品に対する結合特性では, 2週齢で最高の親和性と最低の結合量を, また6週齢では最低の親和性と最高の結合量を示したが, 4~5週では一時逆転する傾向を認めた. 以上から, 成熟ラット顎下腺β-受容体刺激唾液の成分は顆粒管の存在による修飾を受けて分泌されているが, 形態学的発育過程からすると, 4~6週齢の分泌応答は主として完成した腺房細胞の機能を反映したものであり, 7~8週では顆粒管の影響を受ける途中段階を示すものと考えられた.